【齋藤薫の美容コラム】Vol.6~Vol.10

2020.09.02

【齋藤薫の美容コラム】Vol.6~Vol.10

Vol.10 美しいシワ、美しくないシワ

かつて、美容の世界ではこう言われた。「美しいシワはあるけど、美しいたるみはない」と・・・。

ともかく、たるみはその時代、 一度始まってしまったらもう元に戻すのは不可能とされたから、 それは一刻も早く手を打ちましょうという警告だったのかもしれない。

そして確かにシワが美しい人っているもの。 たとえば、晩年のオードリー・ヘップバーン。

アフリカの難民キャンプで慈善活動をする有名な写真のオードリーの顔は、正直シワだらけだったけども、同じような時代に活躍した大女優たち、たとえばエリザベス・テイラーのような人が、当時まったく不自然な仕上がりしかもたらせなかった美容医療に頼って、若さにしがみついているように見えたのとは、対照的だった。

つまり、そういうふうにしがみついているように見えるくらいなら、シワがあった方がいっそ美しい・・・。その時代は誰もが感じていることだったと思う。

そして、オードリーがシワも気にせずに大きく笑っているのも、またとても美しく見えた。女優を引退してからは、セレブとして人前に出ていくこともなく、穏やかに静かに生きた、その生き方も含めて美しい人だから、その人生の年輪のようなシワまで美しいとされたのだ。

でも今、”美しいシワ”、”美しくないシワ”の定義は、少し変わった気がする。かつて、シワを美しくなくす方法はないに等しかったが、今はもうそういう時代じゃない。シワをあくまで自然になくしていく方法はちゃんとある。選べるくらいに、いくつもの方法が。

まずうれしいことに、化粧品のリンクルケアが、ペプチドの新しい処方などで、めざましい進化を見せている。

言うまでもなく、化粧品は、”若返り”ということにおいて美容医療に追随することができるかどうかが大きなテーマになってきた。そして、美容医療が”プチ整形”として大きく進歩してからは、化粧品のエイジングケアが大きく水をあげられていたと言っていいが、ここへ来て化粧品も大きく進化。追いつく日が来るのも夢ではなくなってきたのである。とすれば、今は努力によって美しさを保てる時代。なのに、何もしないでいるのは、あまりにももったいない。そういう意味で、”放置されたシワ”は、それだけで美しいとは言えないのではないだろうか。自然な若返りができるのなら、そのための手間を自分にかけて、美しさと若さをともに得るのが、女性の生き方としてむしろ健全なのではないだろうか。

だから今、ハッキリ言いたい。

最初から諦めてしまっている人のシワは美しくない。面倒だからと衰えを放っておく人のシワは美しくない。逆にたとえ目尻にシワがあっても、ちゃんと手間をかけられたシワは美しいのだと。お手入れしているから臆せずに笑える人のシワは美しいのだと。

それが目で見てわかるようになってしまった時代であるのは間違いない。だからもう美しいシワしかありえないのである。シワを諦めてはいけないのだ。


Vol.9 女が1ヵ月でいちばん美人になる日

「今日はとってもキレイ」と誉められる日があるかと思えば、「今日はどうしたの?」と暗に”キレイじゃないこと”を心配される日もある。

キレイは毎日一定ではないのだ。

いや、自分が考えている以上に、人の印象は日々めまぐるしく変わるものなのである。しかも”その日にどんな美容をしたか”の結果だけではない。身に覚えがないのに、一日中あちこちでキレイを 誉められたりすることが、決して少なくないはずなのだ。

それはそっくり女の体の神秘を物語る。

生理日前後に”吹き出物”が出たり、ごわごわと肌あれしたり、肌色がどんよりくすんだり、ともかく肌状態ががくんと落ちこむことは誰もが知っている。

これは言うまでもなく黄体ホルモンの影響。

正直、どんな素晴らしい美容を駆使しても太刀打ちできない文字通りの生理現象であり、そういう日は家でおとなしくしているに限るが、その代わり女は月に一回、驚くほど美しく見える日がある。いわゆる”排卵日”である。

日常的に肌がピカピカの人はあまり実感がないかもしれないが、月に一日二日、本当に肌がキレイになる日があることに気づいていたはずなのだ。これは女性ホルモンの分泌が高まるからの効果で、化粧品にも負けない素肌効果を持っていることは、きっとみんな知っている。

でもさらなる変化に気づいていた人はいないだろうか?

“その日”は肌が目立って美しく見えるばかりか、顔だちまで整って見えること。

もちろん肌がキレイに見えることで、顔だちも何となく整って見えることは確か。でも明らかに顔が整うのだ。

でもなぜ?

これはアメリカのある大学の研究効果として報告されたものだが そういう時はたとえば、孔雀が羽を広げて異性の心を捉えるように、また鳥が美しい声で鳴いて、愛の告白をするように、女性にとってとても大切な晴れ舞台でもあるはずだ。

だから地球の摂理のひとつとして、その日の女性が彼女にって最上級の美しさを描くことになっても、何ら不思議じゃないのである。

とても単純に、細胞の状態が良い時は、顔だちまで美しく整って見えると言われる。その日は女性ホルモンの分泌量が高まることで、ヒアルロン酸の量が高まり、肌や目がうるうるするだけでなく、細胞それ自体もひとつひとつが丸々と形良く整うから美人に見えると考えていい。そういうふうに美を運命づけられた日があることを、ぜひ覚えていてほしいのだ。

そしてもちろん同じ効果が恋をするだけで得られることも知っているはず。それがたとえ宝塚の男役に対する架空の恋であっても 心をときめかせた分だけ、ちゃんと美人効果が得られることも知っておく。

言いかえれば、化粧品は逆に、ひとりひとりが最高の美しさを輝かせる そういう特別な日の美肌と端正美をそっくり再現するものと考えていいと思う。肌と顔だちがいちばん美しい日の美しさを365日キープする、それが大人の美容のテーマである。


Vol.8 夏に若返る人、夏に歳をとる人

人それぞれ得意な季節があり、苦手な季節がある。体質的に、また生理的に、合う季節と合わない季節があると言ってもいい。それはたとえば、旅をするなら迷わず”東南アジア”という人と、絶対に”北欧”がいいという人がいるのと一緒。夏の暑さと湿度を苦痛に思わない人と、刺すように冷たい乾いた空気を嫌ではない人がいるということなのだ。

日本の四季は今そのくらい極端に、世界の端から端までを再現するほど、激しい気候を見せるようになっていて、だからよけいに季節への好き嫌いが明快なものになっているはずなのだ。

でも、そういう意味で”得意な季節”ほど危ない、と言ったら意外に思うだろうか。皮肉にも好きな季節にこそ”人は歳をとる”と言ったら驚くだろうか。

その気候を快適に思うのは、確かに体質に合っていてストレスが溜まらない証だが、それだけに好きな季節に対して無防備になりがち。つまり知らないうちにダメージを溜め込んでしまいがちなのだ。

油断だけではない。

人は好きな季節には嫌でも身をゆだねてしまうし、その季節自体に寛大になるから、どこかで分かっていながらダメージを溜め込んでしまうのかもしれない。

当然のことながら、好きな季節には自然と外出が多くなり行動的になって、その季節そのものを楽しもうとする。だから不思議なことに、季節のダメージにはさらされているのにむしろ若返って見えたりもする。

生き生きと溌剌と力強く生きていて、しかも幸せそうにも見えるから。事実、夏のスポーツが大好きで、肌は焼けているのに年令より若く見える人は少なくない。

もちろん先々日焼けがもたらす老化は心配だけれど、今はキラキラ輝いている夏美人が少なくないのだ。

つまり、人は2つの年令を生きているのだ。肌が直接受けるダメージによってカウントされてしまう肌年令と、日々をどういう表情で生きているかという印象年令との、2つの年令を。

ただ印象年令も、単に気持ちと表情だけがつくるものじゃない。細胞そのものが元気になれば、見た目の印象も若返ること、知っておいてほしいのだ。

ダメージを受けるのも細胞。でも元気を生むのも細胞。

逆を言うなら、ストレスを溜めずに幸せに生きることは、それくらい細胞を若返らせるのだ。夏の強烈な紫外線にも負けない力で、細胞を元気づける能力を人は持っているということ。

であるならば、夏の間に本気でダメージをはねつければ、逆に好きな季節は人を思いきり若返らせてくれるはず。だから”得意な季節”ほど、本気で守りのケアをしてほしい。幸いUVケアは今、目覚しい進化を遂げている。かつては守っても守っても完全にシャットアウトすることは不可能だった紫外線のダメージを、限りなくゼロにできる時代になったのだ。

そしてまた、細胞が受けた損傷をその場でメンテナンスする究極のエイジングケアも生まれている。

つまり好きな季節を味方につけることが可能な時代になったのだ。

だからこれからは、好きな季節ほど若返る。だから夏美人は、きっと夏に若返る。

そういう時代になってきたことに早く気づいてほしいのだ。夏を楽しむほど若返る。そういう夏美人を目指したい。


Vol.7 歳を重ねるほどに”髪型”は女の命になっていく

80代になる母親を美しいと思うのは、決まって髪がきちんとセットされている日・・・。逆に母親もやっぱり歳をとったなと、娘として少し気落ちするのは、髪に手間がかかっていない日・・・。

母親世代の印象が、もう見事に髪に左右されてしまうのを見るにつけ、歳をとるほどに「女は髪なのだ」と気づかされる。

でもなぜ、歳をとるほどに・・・なのだろう。

おそらく多くの女性が40代から50代のある時期に、髪型を急に変えたくなるはずだ。

たとえば、ずっとストレートロングにこだわっていたのに、ある日突然髪を切ってパーマをかけて周囲をビックリさせた人が、「何だかストレートが急に似合わなくなったことに気づいたの」と言った。

それはひとえに肌が変わってきたせい。

残念ながら、本格的な衰えが始まったサインと考えるべきなのかもしれない。ストレートが似合わなくなるのは、下にまっすぐ落ちていくストレートとの対比が、肌のゆるみを目立たせるから。

そして、どこかにたるみが起きてくると、トップにボリュームが欲しくなるのも、上向きのベクトルが必要だから。流れの美しい、手間のかかったウエーブが必須となるのも、やはり肌のハリを補う意味があるからなのだろう。

もちろん、そういうサインを感じないほど若い肌を保つ人もいるけれど、一方で年齢とともに髪の生え際が立ち上がらなくなってきたり、髪そのものが痩せてきたり、そういう意味でもやっぱり髪型にひとつの節目はやってくるのだ。

もうひとつの理由は、髪が”メイク”に取って変わるから。

どういうことかと言うなら、人は歳をとるほどメイクが似合わなくなる。だから、メイクは年齢を重ねるほどに薄くしていかなければならないもの。口紅もチークも濃くできない、マスカラもアイシャドウもたっぷり塗れない。限りなく薄化粧が基本になるから、そのメイクの代役として主役になるのが”美しく整えられた髪”なのだ。だから、口紅の持つ華やアイメイクの強さを、そっくり再現する華やかでインパクトある髪型が必要になるということ。

もっと言えば、大人の髪にはそういう華やかさや強さがないと、オシャレそのものが映えなくなる。ハイヒールだって似合わなくなる。大人にとって髪は、まさしく服に等しいもの。70代80代になっても、美しいハイヒールをはき続け、若い人をもハッとさせるようなオシャレなマダムでいるためには、華やかで力強い髪が不可欠なのである。

ちなみに、ボリュームがあって美しいウエーブがあって、手間がかかっていること、それが華やかさとインパクトを生むカギである。だから髪が痩せてしまう前に、今から髪のアンチエイジングを始めよう。


Vol.6 ”イザとなれば・・・”という切り札美容がある人は、歳をとらない

10年ほど前、”日本の40代”に奇跡が起きた。それまでは明らかに自分たちも世間も、40代はピークを過ぎた”中年”という認識しかもっていなかったのに、この世代が、いきなり”現役の女性”という自覚を持ち始めたのだ。

きっかけとなったものは何だったのか?

もちろんいくつかの要素があって、たとえば松田聖子さんが40代になっても 20代の頃と変わらぬ若さでステージに立ち、恋をして、年齢革命を起こしたことが、 同世代に目覚めをもたらしたのは確か。私たち、そんなに若くていいの?と言う驚きに満ちた気づきがあったのだ。

そしてもうひとつ、とても大きかったのが、”プチ整形”という新しいジャンルが生まれたこと。

言うまでもなく、レーザー治療やボトックス、ヒアルロン酸注入など、メスを使わない美容整形の施術の出現で、若返りがいきなり身近になったことだった。

メスを使うか使わないか・・・女性にとってそこには決定的な違いがあって、美容整形に強い抵抗がある人でさえ、メスを使わない施術なら、”可能性はあるかも・・・”と考える。

実際にはやらなかったとしても、”イザとなればあの方法がある”という最後の切り札として”プチ整形”があると思うと、何だか不思議なくらいに力が湧いてくる・・・そういうものなのではないだろうか。

イザとなれば・・・それは大きな安心感とともに、計り知れない自信をもたらしてくれる。若さと美しさへの保険は、今まで感じたことのない大らかな気持ちをくれたのだ。

歳をとるのもコワくなくなる。歳をとらない切り札を手に入れたというのに、エイジングがコワくなくなるというのだから不思議。でも案外そういうものなのかもしれない。

年齢に対し、不安や焦りを感じなくなると、人はむしろ若くなる。若返っていく。おそらくは、年齢から解放されるせい。たとえば、自分の若々しさに自信がもてると、逆に自分の年齢を言うことに抵抗がなくなり、「私、いくつに見える?」などと平気で言えたりもする。

イザとなれば、あの”切り札”がある、と思うだけで、年齢そのものに頓着しなくなるからなのだ。だから衰えを感じ始めたら、自分にとっての切り札をちゃんともちたい。

もちろん化粧品も重要な切り札となる。

自分を必ずキレイにしてくれる切り札的な化粧品をもっているかいないかで、見た目の若さがもう変わってくるのである。

またそれを飲めば、翌日必ず何歳か若く見える美容ドリンクなども格好の切り札。そして一方、口紅とかアイラインとか、つけまつ毛とかウィッグ、はたまたドレスとか、ハイヒールとか、自分が確実に若く見えるすべてのものが切り札となる。

そういうものが身の周りにたくさんある人ほど、年齢から解放され、歳をとらなくなるのだ。

  • 齋藤薫 / saito kaoru

    美容ジャーナリスト。
    女性誌編集者を経て独立。 女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人 日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新刊『されど“男”は愛おしい』(講談社)他、『“一生美人”力人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。

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