【齋藤 薫の老けない人。老けない話。】Vol.46  まさに今 見えないところに手間をかけるべき時代。デリケートゾーンケアを考える。

2022.03.02

【齋藤 薫の老けない人。老けない話。】Vol.46  まさに今 見えないところに手間をかけるべき時代。デリケートゾーンケアを考える。

フェムテックという言葉、聞いたことがあるだろうか? これはフィーメールとテクノロジーを合わせた造語。

  つまり女性特有の悩みに取り組む全く新しいジャンルである。

  例えば、生理用品をもっとナチュラルで負担のない、安全なものにするとか、妊娠出産期間を快適なものにするとか。

  さらに、いわゆるデリケートゾーンを特別にケアするといった新しいアプローチ。

  はたまた、最近はアンダーヘアの処理、つまりVIO脱毛もこのフェムテックの中に組み込まれるようになってきた。

  だが新しいジャンルだけに、まだなんのことやら理解ができないという人もいるのかもしれない。

 

  少なくともデリケートゾーンのケアの話など、数年前は誰も口にしなかった。

  私自身初めてそうした製品について説明を聞いた時、ちょっと頬が赤らむほどの気恥ずかしさを感じたもの。

  日本は、ビデを使う人すら極めて少数派であるように、欧米に比べ非常に立ち遅れていた分野であり、ある意味、話題にすることすらタブーだったからである。

 

  にもかかわらず、ほんの数年でアッという間に確固たるカテゴリーを作ってしまった。

  今や女性誌は、フェムテックの話題であふれている。

  それは誰もが密かに気にしていたことの証。

  ひどく気にはなってはいたけれど何の情報もなかったから、放っておくしかなかったことの表れなのだ。

 

  今主流のデリケートゾーンケアは、専用のウォッシュやローション、オイル等の製品がラインナップされているが、要は手付かずだったデリケートゾーンをより清潔にし、顔と同じように保湿もしましょうという提案なのだ。

  じつはそれが、女性としての健康にも、またアンチエイジングにもなるから、少しも恥ずかしいことではないのだという‥‥‥。

 

  ちなみに、アンダーヘアの処理は20代30代にとっては今や常識になっている。

  マチュア世代には驚きだけれど、美容室に通うのと同じように、VIO脱毛のためにサロンに通うことが習慣になっているといわれるのだ。

  それもまたデリケートゾーンを清潔に保つ 身だしなみの1つ といわれれば、意識を変えざるを得なくなる。

  身だしなみの概念そのものが変わってきたといっても良いのだろう。

 

  見えないところにこそお金をかけて美しく‥‥‥そういう価値観は昔からあって、だから「下着にお金をかけましょう」。

  それがエレガントな女性になる1つの決め手という提案に、心を動かされた人も少なくなかったはず。

  でも今、その 見えないところ が、自分自身の体にまで移ってきているということ。

  もちろん体の隅々まで丁寧に手間をかけて磨かれていることが真の美しさ、そういう提案はずっとなされてきたが、 隅々の意味 まで変わったのだ。

  本当に見えない、見せない隅々まで、というふうに。

 

  約200年ぶりに星の巡りが変わり、「土の時代」から「風の時代」へと切り替わったとされ、物質よりも心、目に見えないものをこそ大切にすべき時代に入ったといわれる。

  そういう意味でも、自分自身にさえ見えないところにまで神経を行き届かせることが、新しい時代を心地よく生きるカギとなるのだろう。

  「今すぐここで、水着になってみて」。

  ありえないことだけれど、たとえそう言われても、慌てない、躊躇しない、そのくらいに体の隅々までを磨いておくべき。

  それこそが究極の美容とされる時代になりつつあることも、どうか知っておいてほしい。

  • 齋藤薫 / saito kaoru

    美容ジャーナリスト。
    女性誌編集者を経て独立。 女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人 日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新刊『されど“男”は愛おしい』(講談社)他、『“一生美人”力人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。

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