確かに、何の病気もアクシデントもなく生き続けたら、人間は生物学的に120年は生きられるようにできているという話は以前からあった。でもそれが今現実の事として語られ始めたのである。
それは、化粧品や美容医療が唱えてきたアンチエイジングとは異なり、言わば老化を学問する人たちの研究が進んだ結果、老化も1つの 病気 だから、それを治療すれば人は歳を取らなくなるし、本当の若返りも可能と言い始めたのだ。
もちろん、再生医療を発展的に考えれば、人間はいつしか若さを再生することも可能になるのかもしれないけれど、それよりはるかに早く結果を出すのが、この歳を取らない治療。
老化研究の第一人者が書いて世界的ベストセラーとなっている、「ライフスパン⁄老いなき世界」、その日本語訳が昨年秋に出版されて日本でも大きな話題になっているが、大いに盛り上がっているのはむしろ男性社会。
今まで美容によるエイジングケアとは無縁と考えていた男性たちが、初めて飛びついたといっても良い理論なのだ。
先を越されないように一応マークしておきたいが、要は、老化の引き金を引くのは長寿遺伝子サーチュインの衰え。
これがブレーカーのスイッチをオフにすると家中の電気が消えてしまうように、全身にあらゆる老化症状が進んでしまうという発想。
つまり逆に、サーチュインを活性化させれば単純に人は老いない、長生きするといった、非常に簡潔な理論である。
しかもこのサーチュインを活性化する方法はもう明快で、NADという物質が鍵となるが、これは直接は摂取できないので、その前駆体であるNMNで取り込むことが最速。
サプリで取ることもできるし、点滴で注入することもできるのだ。まだ大変高価だが。
有り難いのは、肌や体力だけでない、内臓や脳の老化も防いでくれるとされること。
耳が遠くなったり、視力が衰えたりすることもそっくり防げるという理屈なわけで、これは信じてみたい気もする。
そして年齢をさかのぼるような若返りもできるとされるが、同時に人間は、呼吸している限り酸化し、放っておいても老化していく運命にある。
ただこのサーチュインの活性は細胞のサビを減らしていく働きがあるわけで、やがてもっと別の方法が見つかるかもしれないが、少なくとも「老化をサプリ治療する」という選択肢が生まれたのは確かなのである。
もちろんこれを一生続けなければいけないが。
とは言え、人生120年とした時、一体いくつまで自らが納得できる美しさを保てるのだろう。
おそらくはそういう老化研究とともに、化粧品や美容医療も同じように進化し、未来の美容は、長寿遺伝子でも届かない肌の美しさや輝きをきちんと間に合わせていくようになるのではないだろうか。
どちらにしても私たちの運命は大きく変わる。
少し前まで80年だった人生が40年も延びるとしたら、それを希望に変えるためにこそ、こうしたアンチエイジングの情報から目を離さないでいてほしい。
こんなに短い期間で年齢事情が激変するなど、過去にはなかったのだから。
そして今の大人世代はそういう意味で極めて幸運。
ギリギリそういう老化治療の時代に間に合ったのだから。
いやそれを幸運にするためにこそ、新しい年齢と取り組む時代が始まるのだ。